校長だより

卒業証書授与式

本日午前10時より、第51回卒業証書授与式を本校体育館にて挙行しました。1時間半ほどの式典でしたが、卒業生の言葉も在校生からの言葉も心のこもったよいものでした。コロナ禍で制限のある高校生活でしたが、そんな中でも工夫して、充実した高校生活を送ってくれたのではないでしょうか。

以下は私が式辞で話した内容です。

『まだまだ朝は冬の寒さを感じますが、今日は皆さんの卒業を祝ってか暖かい日差しです。暦の上でも、立春・雨水が過ぎ、春の訪れを感じる季節となってまいりました。51期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、これまで成長を見守ってこられた保護者の皆さま、本当におめでとうございます。本来であれば、多数の来賓の皆さんにお越しいただき、ともに卒業を祝って頂く予定でしたが、新型コロナウイルス感染防止のため、本日はご参加いただいておりません。多くの来賓予定の皆さんからは、卒業を祝うお言葉をいただいています。さて、卒業生の皆さん、皆さんとは1年間しか同じ時間を共有出来ませんでしたが、たくさんの元気をもらいました。ありがとう。皆さんは、新型コロナウイルスが広がる最初の年、臨時休校とともに高校生活がスタートしました。入学式も出来ず、制約の多い高校生活だったと思います。それでも、制約の多い中で出来ないことを嘆くのではなく、何が出来るかを考えて、部活動や学校行事に取り組んでくれました。「当たり前の日常が当たり前ではないこと」を実感し、だからこそ日常こそが大切だということを身をもって感じてくれた三年間ではなかったでしょうか。そんな皆さんの三年間に想いを馳せると、改めて1学期の始業式の時にした話を思い出しました。12年前の東日本大震災の際に私が被災地支援に行った話をしたことを覚えていますか。2011年、平成23年3月11日、午後2時46分、マグニチュード9の大地震が東北地方を襲い、多数の死者・行方不明者が出ました。その地震が起きた二カ月後、府庁の職員をしていた私は、岩手県に三週間、被災地支援に行きました。そこでの私の仕事は、毎日毎日、避難所を回って、必要な支援物資を届けることでした。避難所で知り合った二十代の男性に、大阪に帰る直前にこんな話をしました。「大阪の高校生に何か、伝えたいことはありますか」。彼は「今を大切に生きて欲しい」、「今できることに精一杯取り組んでほしい」と言いました。なぜそんなことを言うのか。彼には高校時代から付き合っている彼女がいました。5年以上付き合って、二人とも結婚を意識していて、そろそろプロポーズをしようと考えていたそうです。明日しよう、…でも仕事が忙しくて、また明日にしよう、…でも友人との遊びに行くのを優先して、そして、3月10日の夜、明日の仕事が終わった後にデートすることになってる、夕食を食べることになってる、その時に言おう…と思っていたら、あの大地震が起きました。彼女は津波にさらわれてしまいました。彼は悔やんでも悔やみきれないと言います。当たり前の日々は当たり前ではないこと。当たり前ではないからこそ、今を大切に。今出来ることにしっかりと取り組んでほしい。被災地で出会った人の話をもう一つしましたね。現地には、大阪からも多くの人が支援に来ていて、そこで出会った高槻市の職員さんがこんな事を言われていました。「私の仕事は戸籍や住民基本台帳の復元です。全ての戸籍や住民票の台帳が津波で流されたので、現地の人に聞き取りをして、一から名簿を作り直してます。被災した沿岸部には宿がないので、内陸部の宿舎で寝泊まりしてます。朝の5時に起きて、6時には宿舎を出て、8時前には被災地の仮庁舎に入り、夜11時まで仕事をします。肉体的には大変だけど、誰かの役に立っていると思うと、頑張れます」他にもたくさんの支援者と出会いましたが、皆さん、「誰かを支えている、誰かの役に立っていると思うと、元気が出てくる、頑張れる」と言われていました。そうです、人間は自分のためだけでなく、誰かのために頑張ったり、誰かを支えようとした時こそ、はるかに力を発揮できるのです。皆さんには今出来ることにしっかりと取り組んで欲しいこと、自分のためだけではなく誰かのために頑張って欲しいこと、この二つをお願いしました。卒業に当たって、改めて皆さんにお願いします。卒業生の皆さん、どうか、周りの人と支え合い、感謝の気持ちを忘れずにこれからも成長していってください。そして、どうか、今という時間を大切にしてください。誰かの役に立ったり、誰かを支えることで、あなた自身も元気になって、今まで以上に成長してください。最後に、京都大学名誉教授で細胞生物学者の永田和宏さんの言葉を皆さんに贈ります。「高校までの学びは、学習です。学んで習得する。つまり、如何に正しく答えられるかが、大切だった。これからの学びは、学問です。学んで問う。つまり、これからは如何に問うことが出来るかが、大切です」。5年後、10年後、皆さんが幸せになっていることを願って、卒業生の皆さんへのはなむけの言葉とします。』

 

 

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