校長だより

進路を考える

先週、各学年で進路資料集が配布されました。内容は進路関係行事予定であったり、本年度の進路状況・大学受験状況等々、そして最後に合格体験記。生徒の皆さんの参考になる内容になっていると思います。その冊子の巻頭言として、私なりの生徒の皆さんへのメッセージを載せましたので、その一部を以下に再録します。

「進路」を考えるということは、これからの自分の将来を考えるということです。それは、「自分はどんな大人になるのか」「自分はどんな仕事に就くのか」を考えることでもあります。もちろん、「まだ、そんな将来は見えてこないよ」と思っている人もいるでしょう。そんな人は、更に学校生活を続けること(学び続けること)で将来を考えるという選択肢も有りです。さて、そこで皆さんに「学ぶということ」「働くということ」「大人になるということ」について、私が直接お会いしたことのある方の話を紹介します。神戸女学院大学名誉教授の内田樹さん。彼はこんなことを言っています。「学ぶ力には三つの条件があります。第一は自分自身に対する不全感。自分が非力で無知で、まだまだ多くのものが欠けている。だから、この欠如を埋めなくてはならないという飢餓感を持つこと。第二は、その欠如を埋めてくれる『メンター(先達)』を探し当てられる能力。メンターは身近な人でもいいし、外国人でも、故人でも、本や映画の中の人でもいい。生涯にわたる師でなく、ただある場所から別の場所に案内してくれるだけの『渡し守』のような人でもいい。自分を一歩先に連れて行ってくれる人はすべて大切なメンターです。第三がオープンマインド。人をして『教える気にさせる』力です。素直さと言ってもいいし、もっと平たく『愛嬌』と言ってもいい。この三つの条件をまとめると、『学びたいことがあります。教えてください。お願いします』という文になります。これが『学びのマジックワード』です。これをさらっと口に出せる人はどこまでも成長することができる。この言葉を惜しむ人は学ぶことができません。………労働とは、生物学的に必要である以上のものを環境から取り出す活動のことであり、そういう余計なことをするのは人間だけです。どうして人間だけがそんなことをするのか。それは贈与するためです。そして、本当の意味で働き続けるモチベーションを賦活するには、『私の労働を喜びとする他者がいる、私からの労働の贈り物を嘉納してくれる他者がいる』という考え方を内面化することに尽くされると思います。………仕事というのは自分で選ぶものではなく、仕事の方から呼ばれるものだと考えています。『天職』のことを英語では『コーリング(calling)』とか『ヴォケーション(vocation)』と言いますが、どちらも原義は『呼ばれること』です。僕たちは自分にどんな適性や潜在能力があるかを知らない。でも、『この仕事をやってください』と頼まれることがある。あなたが頼まれた仕事はあなたを呼んでいる仕事です。仕事の能力については、自己評価よりも外部評価の方がだいたい正確です。頼まれたということは外部から『できる』と判断されたということであり、その判断の方が自己評価よりも当てになります。………大人というのは、道端に落ちた空き缶を拾うとか、同時にドアの前に立った時に『あっ、お先にどうぞ』と道を譲るとか、雪の降った朝に早起きして家の前の道の雪かきをしておくとか、こういうのを一人でやろうと決めて、誰の許可も同意もなしにできる人のことです。」

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