校長だより

1学期終業式を終えて

本日、1学期終業式を無事終えることが出来ました。新型コロナで複数の生徒の皆さんが自宅待機や自宅療養を余儀なくされているので、手放しで喜ぶことは出来ません。陽性になられた皆さんの一刻も早い快復をお祈りしております。

終業式はこういった状況も踏まえて、オンライン形式で行いました。生徒の皆さんは教室で私や生徒指導部長の映像を見ながら、しっかりと話を聞いてくれました。私が話した内容は以下の通りです。

『今日は「寝る子は育つ」という話をします。先人の教えですが、実はこれが最新の脳科学で裏付けられました。私たちは夜寝るとすぐに非常に深い眠りに入ります。最初の深い眠りが一番長いことがわかっていて、概ね1時間から1時間半続きます。その後、脳の眠りは浅くなり、深くなり、浅くなり、深くなり、これを何度が繰り返して、朝を迎えます。皆さんにとって、特に重要なポイントは2カ所です。まず、最初の深い眠りの時間帯です。この深い眠りの際には、成長ホルモンが脳の下垂体から血中に出てきます。この成長ホルモンは、体を強く大きくたくましく成長させるために必要なホルモンです。これは大人にとっても免疫機能を高める役割があります。すなわち病気になりづらい体になるために必要なホルモンです。成長ホルモンは厄介な点もあります。それは一日の24時間の中で分泌されるパターンが決まっているということです。夜の10時から短い時間にピークがあるということがわかっています。ですから、皆さんは夜の10時には深い眠りにいれておく必要があるということです。もうひとつ重要なポイントは、脳の眠りの浅い状態(レム睡眠)です。レム睡眠時は閉じた瞼の中で目がきょろきょろと動いています。この状態のとき、私たちは夢を見ています。朝起きてみた夢というのは最後のレム睡眠で見た夢です。最後のレム睡眠で覚醒した人だけが、その夢を思い出すことができます。そのほかのレム睡眠で見た夢は記憶に残らないということもわかっています。このレム睡眠がなんのためにあるのかということは実は長い間、論争の的でした。論理的に考えれば睡眠というのは日中に使った心身を休ませるためにありますから、深い眠りを継続したほうが理にかなっているはずですが、なぜか私たちの脳はわざわざ眠りを浅くするという戦略をとっていました。その理由を心理学の先生方が見つけました。それは、脳はレム睡眠のたびに日中に行った学習や活動を整理整頓して記憶に書き込んでいるということでした。運動であろうと勉学であろうと、脳が勝手に復習し、記憶として固定する時間がレム睡眠ということです。つまり、レム睡眠が多ければ多いほど、学習した内容を覚えているし、運動の成果も定着するという訳です。8時間睡眠を取ったとします。レム睡眠は6~7回訪れます。夜更しが習慣化して6時間しか寝なかったとしますと、レム睡眠の数が3分の2に減るということです。つまり、記憶の固定する回数が3分の2に減ると言うことです。おわかりのように、睡眠時間6時間の子供と6~8時間の子供では明らかな差があり、教科によっては20点くらい差がでています。これは、寝ていない子どもたちは努力をした成果が脳に残らないということです。運動にとってもまったく同じと考えられます。ある国立大学医学部の1年生に、受験期に何時間くらいの睡眠を取っていたのか聞いてみた結果があります。だいたい8割以上の学生たちが11時前には寝ています。別の国立大学入学者に民間企業が同じ調査を行ったところ、75%の学生が11時前に寝ていたという結果でした。寝ないと学力は脳に宿らない。これはレム睡眠ひとつとってみても言えることだと考えています。睡眠不足の影響は運動にも表れます。例えば、足の速さ。平均値でいうと寝ていない子は明らかに足が遅いです。持久力の調査をしても同様です。睡眠不足による子供への影響を、仙台市の子供たちを調査した結果があります。脳の中央部分には海馬と呼ばれる部分があります。海馬は記憶の脳とも呼ばれて、全ての記憶は海馬を通って脳の中に分散されます。この海馬の体積が睡眠時間と正相関することが、子供たちの脳の計測でわかりました。睡眠不足の子供たちは海馬が小さいまま大人になります。現在アルツハイマー病を発症している方は70歳代~80歳代が中心です。これは予測ですが、現在の子供たちは海馬が小さくなって育っていますので、今後は60歳代くらいから発症するのではないかという予測が成り立ちます。寝ないことは大変なリスクを負うことを知ってください。寝不足かどうかをどうやって判断するか、個人個人に必要な睡眠の長さは違います。平均値として概ね6~8時間という数値はありますが、誰にでも同様に何時間寝なさいとは言えません。どうやって判断するかですが、学校や部活動のない休日に、平日と同じ時間に目覚めるかどうかが判断の根拠になります。休みの日に普段よりも長く布団に入っていないとだめだという人は、大人も子供も睡眠不足の状態にあります。必要な睡眠時間は、休日の睡眠時間を基準に考えてみてください。』

コロナに負けない免疫力をつけるためにも、昼間の学習や運動を定着させるためにも、夏休みといえど十分な睡眠時間を取って、2学期には元気な笑顔を見せてもらいたいものです!

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